『家族という地獄』___そんなワードが象徴するようなどす黒い世界を描いた後味の悪い映画「葛城事件」。
支配する父親の元で次第に歪み、運命を狂わせていく妻、そして二人の息子の姿を描いています。平凡に暮らしていると思っていた父親。
しかし、長男はリストラの上、妻子を残して飛び降り自殺。
次男は何の関係もない通りすがりの人々を次々に襲って無差別に殺傷し、死刑囚に…。
妻は心が壊れて病院から出られなくなりました。
実は、この作品は実際の事件をモデルにしている、と言われています。
映画【葛城事件】とは実話なの?元になった事件は?
本作のベースになったのは付属池田小事件です。
2001年、大阪教育大学付属池田小学校___宅間守(後に死刑囚)が凶器を持って侵入し、幼い児童8名を殺害し、13名の児童と2名の教諭が負傷したという類を見ない凶行です。
現行犯逮捕された宅間守は精神障害者を装うなど悪質な点が見られましたが、刑事責任能力が認められ、
公判を経て二年後には死刑が確定し、その翌年(2004年)には死刑が執行されていたのです。
赤堀監督は2013年にこの事件をもとに舞台版「葛城事件」を作り上げ、また、映像化に伴い
土浦連続殺傷事件
秋葉原通り魔事件
池袋通り魔殺人事件
などを綿密に取材し、参考にして映画「葛城事件」を構築していったそうです。
葛城事件や他の事件ではなぜ獄中結婚をしたのか?
映画「葛城事件」では田中麗奈演じる星野順子は無差別通り魔事件(葛城事件)を起こして収監されている稔(みのる)に獄中結婚を申し出て、婚姻関係を結んでいます。
彼女は「死刑制度に反対する立場」から、稔を理解し、救いたい、と懸命になって働きかけますが、
その想いは空回りし、稔には最初、名前を覚えてもらうこともできないようなすれ違いぶりを見せていました。
母親は心を病んでしまい、ただ一人、市井に取り残されている父親に懸命に訴えてもその意図は彼女が思うようには伝わらず、もどかしい描写が続いていくのです。
文通から始まり、触れることもないままに結婚へと突き進むことは、一般的に理解しがたいことですが、実はリアルに起こりえます。
本作のモデルになった一つ、付属池田小事件の宅間守死刑囚、連続ピストル射殺事件の永山則夫死刑囚、にはそれぞれ獄中結婚した配偶者がいました。
女性でも、木島佳苗死刑囚は三度目の獄中結婚の相手が某大手週刊誌の記者であったということが話題になっています。
獄中に在っても、要件を満たせば結婚する権利は保証されているのです。
また、死刑判決が確定している場合、面会できる人間が制限されるので、“支援者”が婚姻を結び、配偶者として面会する、というパターンもあるのだそうです。
前述の宅間守死刑囚は“死刑廃止運動家”の女性と文通を経て獄中結婚していました。
当初は頑なだった態度も、“妻”や支援者・理解者の働きかけに少しずつ心を開き、その最期には
「ありがとう、と僕が言っていた、と妻に伝えて下さい」
と言い残したとされています。“獄中結婚”という選択をした人が主張することにはある程度の共通項があります。
その犯行には彼らなりの理由があり、過去やその成育歴に問題があったとして、その為人を理解したい(愛したい)と言う人、
そして死刑廃止を訴える活動の一環としての獄中結婚というパターンが多いように見受けられます。
ツイッターでの反応は?
こんな家族、もしかしたらあなたの隣にいるかもしれませんよ。
☑︎葛城事件
抑圧された家庭の中でいかにして無差別殺傷犯が生まれたのか。横暴で無愛想、つい昨日昭和からやって来たような父親が胸糞。自らが生み出した理想の家族像に溺れ固執するがあまり、崩壊し切った城に一人居座り続けるという皮肉。重苦しくて居た堪れない。誰一人まともじゃない。 pic.twitter.com/DyGkXyNLns— 軽部 (@_karube_21) June 13, 2020
結婚した女=順子は異分子として葛城(父親)を振り回します。
父親が最低で、あの結婚した女はある意味怖い。
まず直すべきところが違うだろってなったね助けるべきとこが違う
んーーーーー。 pic.twitter.com/X4VRCpscqG— 今日の映画録 (@7Wc067iIhz5q3kw) June 17, 2020
受け止め方は、人それぞれです。
付属池田小事件や秋葉原連続殺人、池袋通り魔等の凶悪事件を複合してモチーフにした映画
トップクラスの二度と観たく無い映画らしいが自分は嫌いじゃなかった#葛城事件 pic.twitter.com/zQFL1fWtrj— T (@takahito0117) June 15, 2020
こんな三浦友和さんは見たことない、という怪演です。
『#葛城事件』
Netflixにて。通り魔事件を起こした青年の家庭環境に迫る刺激的な作品。ハラスメントの寄せ鍋の如き父親の姿は典型的な日本の父親像と二重写しで恐ろしい。自覚なき抑圧が家庭に負の影響を与え崩壊してゆく展開が悲惨。自分が諸悪の根源だと気付けない父親の姿には憐憫の情すら覚えた… pic.twitter.com/VKEGHFTzBA
— シネマン(映画好き) (@cineman_0727) June 11, 2020
『葛城事件』観了!
自分の人生観に固執する父によって崩れる家族。
期待を背負う兄の保よりも見放された弟の稔の方が父親似なのが皮肉。清流子育ては無意識なのが怖い。
やつれた家族の演技、明るいのに閉鎖的な家、変わらず佇むミカンの木…何でも思い通りにしようとしてきた男らしい終幕だった。 pic.twitter.com/Y6YZrmCgDw— チャーリー (@LseydouxJbardem) February 22, 2020
平凡に暮らしていれば、「知ることもない」世界がこの映画の中には、日常として描かれているのかもしれません。
凶悪な事件の「裏側」には、その人の歩んできた人生があり、その結果が事件となって明るみに出るのです。
それを、支援し理解しようとする気持ちと、葛藤の末獄中結婚はあるのかもしれません。