往年の名作『西部戦線異状なし』がNetflixでリメイク、配信が始まりました。
1917年、第一次世界大戦真っただ中のヨーロッパ___その凄惨な戦場の描写の中で気になった場面がありました。
生き残った新兵が小さな袋を片手に、戦死した兵士の首にぶら下がった鎖の先についたプレートを割って、その断片を回収していくというシーンです。
それが意味するものは?そのネックレスとは一体何なのか、調べてみました。
目次
【西部戦線異状なし】死んだ兵士のネックレス外す意味は?
Netflix版「西部戦線異状なし」を観る。名もなき新兵たちの視点で第一次世界大戦の最前線に放り込まれる圧倒的な体験は、途中で逃げ出すことが許される自宅での鑑賞にも関わらず、喉が渇こうが尻が痛くなろうがその場から一歩も動けず。心臓を鷲掴みされるような音楽も超一級品。劇場で観たかった。 pic.twitter.com/9xFxTi52o1
— 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) October 31, 2022
【西部戦線異状なし】死んだ兵士のネックレス(ドッグタグ)を集めるシーンがある
第一次世界大戦が始まって三年後、膠着状態の戦場で、ろくな訓練もなく放り込まれた若い志願兵・パウルが遭遇したのは壮絶な戦闘でした。
砲撃で吹き飛ばされたながらも生き残った彼は、上官から袋を手渡され「回収しろ」と命じられました。
何を___?
パウルはおもむろに転がっている遺体をひっくり返し、首から下げている鎖に繋がったプレートをへし折り、その断片を袋に集めて泥の中を歩いていたのです。
ドッグタグの目的や使用方法は?
ドッグタグは軍隊に於いて兵士の個人識別用に使用されるネームプレートです。歴史は古代、ローマ時代のイレズミに遡りますが、
現在の形式のものは150年ほど前の普仏戦争の頃から使用されているようです。犬の首輪につける鑑札に似ていることから”dog tag”と呼ばれるようになりました。
戦場における個人識別情報(氏名、生年月日、性別、血液型、所属部隊、国籍、認識番号、宗教…等)を刻印したプレートを鎖で首から下げて使用しています。
いずれも楕円形・長円形のもので、イギリス軍などは真ん中に切れ目を入れたプレートの左右に同じ内容の情報を刻印して使用しており、
米軍などは同じ内容のプレートを二枚一緒に身に着けているのです。『西部戦線異状なし』で使用されているのは一枚の真ん中に切れ目が入っているもので、
戦死した時に折り割って、一枚は遺体に残し、もう一枚を持ち帰ります。残したプレートでその遺体が誰なのかを識別し、持ち帰った方で戦死情報を管理する、と言う意味を持っています。
二枚を鎖で首から下げている場合、一枚はその長い鎖に通し、もう一枚はその長い鎖に別の短い鎖でプレートを繋いでおき、戦死した場合には短い鎖を切ってプレートを回収します。
日本でも自衛隊が二枚組の米軍と同じタイプのアルミのプレート二枚組のものを採用しています。
近年は、二枚のプレートを下げているときにチャラチャラと音がするので、それを防ぐためにサイレンサーと呼ばれるゴムのフレームをつけています。
日本でドッグタグが一般に知られるようになったのは1986年の映画『トップガン』と『プラトーン』の影響です。
『トップガン』ではマーベリック(トム・クルーズ)が首から下げていたり、バディのグースのドッグタグを握りしめて決意を固めるシーンに登場しており、
その時期にファッションアイテムとして日本人の若い世代に広がりました。
『トップガン マーヴェリック』を
観るために復習‼️
36年前に映画館🎬で観た
『トップガン』を観ました🛩
そんなに経つんですね〜😅
あの頃みんなMA-1着て
ドッグタグを首からかけてって
スタイルしませんでした〜😁
バックにつけたりー
みんな持ってましたよね〜😆😆#トップガン pic.twitter.com/2sGi5yXc4L— いいてふ24 (@3take_yu28) June 1, 2022
また『プラトーン』は公式ロゴの『Platoon』の『oo』の部分がドッグタグでデザインされていました。
今日の午後のロードショーは、
「プラトーン PLATOON」
【監督】 オリバー・ストーン
【主演】チャーリー・シーン トム・ベレンジャー
1986 pic.twitter.com/hS1BrCIHmC— 今日の午後のロードショー (@gogonohitotoki7) October 8, 2019
ドッグタグはどこで買える?価格や購入先は?
『西部戦線異状なし』
往年の『プライベートライアン』や最近の『1917』に引けを取らないリアルかつ残酷な戦場描写。しかしそこに描かれるのはカタルシスなど物語的な感動でもなんでもない「理不尽さと不条理さ」。ラストに流れる文章を読むと、より虚脱感に襲われる。まさに今観るべき映画。 pic.twitter.com/LDL5C0qolV— 村長 (@movie_soncyoh) November 3, 2022
最近では『トップガン マーヴェリック』で公式グッズとして作中のマーヴェリックのドッグタグのレプリカが発売されています。
これはリアルな仕様のもので、長い鎖に一枚のプレート、そしてその鎖に短い鎖でもう一枚のプレートが繋がれています。
また自身の個人情報を記載したオリジナルのドッグタグを作ることもできます。
楽天やAmazonなどの通販サイトではさまざまなメーカーやブランドが取り扱いをしています。
楽天
リアルなタイプのアルミ製、ステンレス製、チタンやシルバー、18金など素材もいろいろで、中にはダイヤを埋め込んだ装飾品も。
エンボスで文字を刻印したものや、レーザー加工のものなど、ずいぶん種類が増えました。
お値段は1800円~10数万円と幅広いラインナップがあります。
また、コミケなどのイベントではその場で好みの素材で希望の文字を刻印して作ってくれるサークルさんが出店していることもあります。
ネックレス状で使用される方や、キャラクターなどの刻印を入れてお子さんのリュックなどにつけて迷子札にする方もいらっしゃいます。
まとめ
・ドッグタグは軍隊に於いて兵士の個人識別用に使用されるネームプレート。
・二枚組、もしくは一枚に切り込みが入って割れる仕様になっており、兵士が戦死した場合に片方を遺体に残し、もう片方を回収して持ち帰ることになっています。
・日本でドッグタグが一般に知られるようになったのは1986年の映画『トップガン』と『プラトーン』の影響。
・楽天やAmazonでオリジナルのドッグタグを作ることが可能、価格は素材と仕様により1800円~10数万円程度。
本来の意味を超えて、アクセサリーとして広く愛用されるようになったドッグタグですが、
これが本来の目的で使われることがない、そんな世界でありますように、と祈らずにはいられません。